お葬式のルールは数多く存在します。
ややこしいのですが、『知っておくとちょっといいかも』シリーズです。
意外に知らない上座と下座のお話です。
喪主をはじめ、遺族が座る場所ってなぜ右なの?
祭壇にお供えする花の並び順ってどうやって決めているの?
そんなちょっとした違いですが、意味があるんです。
早速見ていきましょう。
仏教式を軸に書いていきます。
この記事のポイント
・お葬式に関する上座と下座がわかります。
・式場内の席順と供花の順番の決め方についてわかります。
『上座』と『下座』ってなに?
まずは、上座と下座について。
よくビジネスマナーにも上座と下座って言葉が出てくると思いますので、ちょっとは聞いたことあるかと思います。
簡潔に言うと、入り口から一番遠い位置が『上座』となります。
例えば応接室などの部屋の他にも、車、エレベーターなど様々な場面で座る場所に頭を悩ませていることでしょう。
古来より日本では、出入り口から一番遠い部屋の奥に、床の間や神棚を設ける習慣があります。部屋の一番奥は神聖な場所ということで、今でもその習慣が続いているようです。そして今でもその習慣を大切に考えている人がおり、マナーの一つとして現在も続いているのです。
葬儀の場にもある『上座』と『下座』
さて、上座と下座についてはビジネスシーンにおいて重要とされておりますが、葬儀の場でもこの慣習が存在しています。
・葬儀場内の座る位置
・供花(祭壇の横に飾る名前札付きの花)
・祭壇にお供えする果物の種類
・通夜振舞いや告別料理での席順 etc…
通夜振舞いや告別料理での席順での順番はビジネスマナーと同様、入口から一番遠い席が上座となりますので、わかりやすいと思います。
ちなみに結婚式同様に、末席(下座)は喪主となります。
そこで困ったことが一つ
入口から一番遠い位置が上座なのはわかったけど、右側と左側ってどっちが上座なの⁉って思いませんか?
そこで登場するのが『左上右下(さじょううげ)』というやつです。
左上右下(さじょううげ)とは?
「左上右下」の考え方は飛鳥時代、遣唐使などを通じて中国から伝えられた。唐の時代、中国では「天帝は北辰(ほくしん)に座して南面す」との思想のもと、左が上位として尊ばれた。皇帝は不動の北極星を背に南に向かって座るのが善しとされ、皇帝から見ると、日は左の東から昇って右の西に沈む。日の昇る東は沈む西よりも尊く、ゆえに左が右よりも上位とされた。
出展:NIKKEI STYLE くらし&ハウス暮らしの知恵
左を上位とする考えは、飛鳥時代に中国から伝えられたものなんですね。
現在もこの考えが定着しており、日本においては左上右下が基本となっております。
右側と左側のトリビア
⑴西洋では基本的に「右」が上位
西洋では、英語で右を「正しい」の意味がある「right」と言うように、日本礼法とは逆に「右を上位、左を下位」とする「右上位」が基本らしいです。
⑵中国では時代によって異なる
戦国・秦・漢時代には右を上位とする考えがあったそうです。
ちなみにこのころに作られた言葉で『左遷』という言葉が生まれたので、左が悪いというイメージがあると思います。
⑶日本での例
天皇から見て左側に格上の左大臣、右側に格下の右大臣が立ったらしいです。
また、漢字の『左右(さゆう)』と言うが『右左(うさ)』とは言わないのは左上位であるからということらしいです。
以上のことから、このような順序が日本において優先されるということです。
上位 | ← | ← | 下位 |
左上 | 右上 | 左下 | 右下 |
★ ○ ○ ○ | ○ ★ ○ ○ | ○ ○ ★ ○ | ○ ○ ○ ★ |
しかし!葬儀においてはこの通りには行きません。
詳しくご説明していきます。
葬儀のおける上座と下座
誰かの葬儀に参列した経験がある方は、思い出せますでしょうか。
いくつか例を出してみましょう。
葬儀場内の座る位置
喪主や遺族の席は『右側』にありませんでしたでしょうか。厳密に言うと、祭壇を正面に見た場合、中央に通路があり、右内側に喪主で、血縁の近い方から外側に座っている状態だったと思います。パターンは2種類あります。
前面式:全員が祭壇側を向いているタイプ
対面式:遺族・親戚は向い合せに座り、一般参列者が正面を向いているタイプ
おおよそ上記2タイプのレイアウトになることがほとんどです。
こちらを見ていただくと、喪主が右内側に座っているのがわかると思います。
こちらが一般的な席順になります。
喪主席が左上でなく、右上に位置しているのがわかりますね。
供花(祭壇の横に飾る名前札付きの花)の順番
祭壇の左右に備えられている供花(名前札付きの花)の置く順番や位置にもルールがあります。
まずは喪主(または施主)の供花が祭壇の内側①②の位置に設置します。
喪主花は1対(2基)出すのが一般的です。
次に近い方が③、次に④というように、左右交互に置いていきます。
置く順番は、故人から見て血縁の近い方から置いていきます。
※状況により、喪主の後は年齢の高い方から置く場合もあります。
供物(写真下側の果物や缶詰)は供花と高さが異なるため、改めて血縁順に置いていきます。
こちらは右上から左上へと交互に設置されているのがわかりますね。
祭壇にお供えする果物の種類
祭壇上に果物をお供えすることがあります。リンゴやグレープフルーツ、メロンやバナナ、パイナップルなど、グレードによって様々ですが、こちらはいかがでしょうか。
写真を見ていただくと、右側にリンゴ、左側にグレープフルーツが供えられています。
よく言われるのが、『色の濃いものが上位』という解釈があります。
そのため、色のより濃いリンゴが右側に置くというのが通例のようです。
実際に私が勤めていた葬儀社でもそのように教わりました。
が、果たしでそうなのでしょうか。
果物と同じく仏菓子と呼ばれる砂糖菓子をお供えする場合があります。
上記左側の仏菓子ははっきりと濃淡が分かれておりますが、右側の仏菓子はそうではありません。
両方とも葬儀で使用されるものです。
色の濃淡がルールとして適用されるのであれば、右側の仏菓子はルール違反ということにまります。
よって色の濃淡は葬儀における上位下位には関係ないと言えると思います。
ただし、葬儀においては地域の慣習が大きく作用するため、一概に間違えとも言えませんので、地域の風習や宗教者に確認した法が良いかもしれません。
『祭壇にお供えする果物の種類』については参考程度に見ていただければよいと思います。
葬儀の主役は故人
ここまで読んでいただければピンと来たと思いますが、
葬儀においての主役は『故人』です。
左上右下が逆なのは『故人』から見て左右を決めているからです。
柩は横向きなので厳密に言えば少しズレるのですが…
ちなみによく見る光景として、祭壇の前に柩があり、お坊さんがいて参列者がいる図になっていると思います。
これは故人の顔が見えるように祭壇の前に安置されているのですが、
本来は祭壇の輿(祭壇中央の一番上の空間)に柩を安置していました。
そのことから、供花や供物の向きが逆なのも納得してもらえると思います。
生花や供物はギリギリ輿の手前ですから。
経験談
私が経験した葬儀で、柩は祭壇の裏に安置しなくてはならず、供花も後ろ向きで供えなくてはならないというのがありました。
かなり特殊な例ですが、こだわりのある宗教者の場合は妥協無く形式にこだわった葬儀もあります。
ちなみに『神式(神道の葬儀)』は基本的に祭壇の裏に柩を安置します。
仏式とは全く異なるので、宗教の違いって興味深いですね。
まとめ
『葬儀場内の座る位置』と『供花の順番』については設置するルールがおおよそ決まっているので覚えておくとよいと思います。
葬儀のディレクターからアドバイスをしてもらえると思いますが、中には適当な人がいることも事実です。
座り順はもちろん、供花の順番については後々、親戚や会社関係とのトラブルが起きないとも言い切れません。自己顕示欲の強い方は見栄を大切にするため、他との上下関係に強くこだわりを持っている事があるからです。
かなり細かい内容ですが、知っておくと少しは役に立つかもしれません。
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